ですから格子間隔によって大気現象をどれぐらい詳しく予報できるかが決まります。現在、気象庁では異なる水平格子間隔をもつ四種類の数値予報モデルがそれぞれの目的に応じて運用されています。このうち台風予報にかかわりの深い三つのモデルについてその概要を表にまとめました。
台風進路予報は主に「全球モデル」と「台風モデル」が使われます。全球.モデルはその名のとおり地球全体を予報領域としています。台風モデルは台風の周辺に領域を限って特に格子間隔を細かくした台風予報専用の数値予報モデルです。
従来の全球モデルは水平格子間隔が一一〇キロメートルでしたので、台風周辺の大気の状態をうまく予報するには必ずしも十分ではありませんでした。ですから従来の台風進路予報には主に台風モデルが利用されていました。
新しい全球モデルでは水平格子間隔を一気に五五キロメートルにまで強して、予報精度の向上を図り台風予報にも利用できるようにしました。全球モデルは午前九時と午後九時(日本時間)の大気の状態を初期値として一日二回予報が実施されます。
台風の三日予報を実現するために十分な八十四時間(三日半)の予報を行っています。台風モデルとは違い毎日予報を実施しますので台風の発生段階から予測を行うことも可能になりました。なお、午後九時の初期値からは百九十二時間(八日)まで予報を延長して従来どおり「週間予報」のための資料も作成します。
<図>台風モデルによる進路予報の一例

台風モデルについても水平格子間隔を従来の五〇キロメートルから今回の更新で四〇キロメートルに強化し、予報精度の向上を図りました。また、三日予報のために予報領域も拡げました。従来の台風モデルは午前九時と午後九時(日本時間)の大気の状態を初期値として予報を行っていましたが、これについては前述のように新しい全球モデルが担当することになりましたので、新しい台風モデルは午前三時と午後三時(日本時間)の大気の状態を初期値として予報を行うことになりました。
こうして最新の観測データをもとにした数値予報を六時間ごとに実施することになり、刻々変化する台風の勢力や進路をいち早く数値予報に反映できるようになりました。
台風モデルは、台風または二十四時間以内に台風になると予想される熱帯低気圧がある場合に、その周辺に予報領域を設定して七十八時間(約三日)の予報を行います。予報対象の台風または熱帯低気圧が同時に複数存在する場合は、その中の二つを選んで、それぞれについて台風モデルが使われます。
台風が日本に接近してくると、日本付近の北東アジアを予報領域とする「領域モデル」によっても台風予報ができるようになります。領域モデルは、水平格子間隔が二〇キロメートルと非常に細かいので、日本近海や沿岸部での風雨